水素用金属シール

超高圧水素用メタル・リング「ハイドロブロッカー」
燃料電池技術を核とした水素利用は、地球の深刻な問題、すなわち石油に頼らないエネルギー源の開発、温暖化などへの有望な対策です。
ところが、水素を安全に低コストで利用する技術的課題もあり、
・水素は分子が小さく、漏れやすい気体である。
・水素は750気圧(75Mpa)以上の高圧で使用される。
などの点から、パイプの継ぎ目、パイプと部品の継ぎ目が「いかに漏れを防ぐか」は非常に重要です。
その上、水素は「水素脆化」という金属材料の強度を非常に脆弱にする現象を引き起こします。
この高圧水素用メタルリング「ハイドロブロッカー」は、ふくおかIST産学官事業「フルメタル水素管接合システムの研究開発」(平成20〜21年度)において、TOKiエンジニアリングが開発を行い国立研究開発法人 産業技術総合研究所により性能評価に関する検証・実証が行われました。
その後、市販化のために、TOKiエンジニアリングの技術と九州大学の水素脆化研究(九州大学水素材料先端科学研究センターHYDROGENIUS、ならびに、九州大学カーボンニュートラル・エネルギー研究所 WPI-I²CNER)の成果を活用して、福岡水素エネルギー戦略会議のご支援をいただきながら、開発を行うことが出来ました。
従来のリングと異なる特徴は、
・金属の弾性的なたわみを利用(弾性領域を生み出している)(図1①)
・水素の圧力が、シールをより強くする(自緊式領域を生かしている)(図1②)
・水素脆化に強い材料を使用(SUS316L、SUH660)
・メタルリングの締付力が小さい(ハイドロブロッカー)
・大量生産に向く形状を有している

図1 高圧水素用パッキンの原理
高圧水素を使用した性能実証実験は、水素エネルギー製品研究試験センター(HyTReC、糸島市)で行いました。
結果の一例を表1に示します。
このパッキンは、2013年6月より市販されており、安全で高信頼性の水素利用機器の普及に寄与するものと期待しています。

表1 性能実習実験結果の一例

福岡水素エネルギー戦略会議の支援で商品化
メタルリング接続技術は、世界のあらゆる産業をリードする

HyTReC設備を利用した試験・研究内容について
(1)ハイドロブロッカーを試作・評価し、実用域の耐圧87.5MPaを達成する。(自動車メーカー希望数値)
燃料電池車の高圧貯蔵タンク用リングの世界基準を目指す。

(2)水圧サイクル試験で10万回、水素ガス サイクル試験で2万回を達成。
今後、実用化に向けて信頼性向上のため回数を増やす。
限界域の水圧テスト343MPa達成(破壊できず)2012年3月


日付 水素ガス気密試験 水圧 圧力サイクル試験
2012年3月7日 ヘリウムガスで 70MPa に昇圧10分間保持
水素ガスで 70MPa に昇圧10分間保持
2MPa〜87.5MPa 10サイクル/分
①11,250回 ②45,000回 ③100,000回
日付 水圧 耐圧破裂試験 水素ガス サイクル試験
2012年3月28日 圧力 343MPa 昇圧後60秒以上保持
昇圧速度 0.3MPa/秒
①85° 条件0.6〜87.5MPa
②-40° 条件0.6〜70.0MPa
各温度 20,000回

福岡水素戦略会議研究開発支援事業
弾性変形シール形ステンレス金属パッキンの実用化研究開発
九州大学

九州大学大学院 工学研究院 機械工学部門
Air Liquide Industrial Chair of Hydrogen Structural Materials and Fracture
九州大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所(I²CNER)
国立研究開発法人 産業技術総合研究所(AIST)
九州大学水素材料先端科学研究センター(HYDROGENIUS)

福岡水素エネルギー戦略会議 平成22年度第6回研究分科会
〜高圧水素下における機械要素研究分科会/高圧水素貯蔵・輸送研究分科会〜